1794年5月からたった10か月の間に、140数点もの版画を残して忽然と消えた写楽。それまで没個性的だった役者絵の型を打ち破り、歌舞伎役者の内面にまで迫ったこの謎の絵師については、浮世絵師の喜多川歌麿、歌川豊国
、戯作者の山東京伝や十返舎一九、歌舞伎役者、阿房の能役者
など20以上にのぼる「別人説」がある。だが、大半の説の根拠となるものは、写楽の死後何十年もたってからのものを含めた史料であり、なかには、推理の域を出ないものもある。本書は、現在ではあまり省みられない「写楽は葛飾北斎である」という説を、徹底的に実証しようとした力作だ。
西洋美術研究には、描かれている身体の細部を分析、比較検討して作者を認定する方法がある。ヨーロッパ美術の第一人者である著者はこのメソッドをさらに深め、筆の勢いや躍動感などを含めた多角的な観点から、写楽の全作品を数多くの図版とともに検証。他の別人説の矛盾を突きながら、若き日の北斎との共通点を鮮やかに、説得力をもって明らかにしていく(両者の相撲絵で、踏ん張る力士の足のかたちがまったく同じであるのには、ただ驚かされるばかりだ)。そして、写楽の後期作品のスタイルの崩れと、たった2点の武者絵から北斎への移行を解き明かす。大胆なの役者絵の写楽と、「富獄三十六景」の北斎。世界に誇る芸術家2人を見事に重ね合わす刺激的な書だ。(小林千枝子)
西洋美術研究には、描かれている身体の細部を分析、比較検討して作者を認定する方法がある。ヨーロッパ美術の第一人者である著者はこのメソッドをさらに深め、筆の勢いや躍動感などを含めた多角的な観点から、写楽の全作品を数多くの図版とともに検証。他の別人説の矛盾を突きながら、若き日の北斎との共通点を鮮やかに、説得力をもって明らかにしていく(両者の相撲絵で、踏ん張る力士の足のかたちがまったく同じであるのには、ただ驚かされるばかりだ)。そして、写楽の後期作品のスタイルの崩れと、たった2点の武者絵から北斎への移行を解き明かす。大胆なの役者絵の写楽と、「富獄三十六景」の北斎。世界に誇る芸術家2人を見事に重ね合わす刺激的な書だ。(小林千枝子)
内容(「BOOK」データベースより)
写楽と北斎は画風が異なるという固定観念があった。たしかに写楽のそれは役者絵だけであるから、その表情の写実性からは、北斎の美人
画のほっそりとした類型性や、北斎漫画的な諧謔的な表情と共通するところがないように見える。が、それは以後、北斎が役者絵というジャンルを扱わなかったからに過ぎない。表現ジャンルが違うのである。だが、写楽が、わず
かながら武者絵や相撲絵を描いたことによって、北斎と通底するものが発見できるのである。また写楽の役者絵は、北斎の青年期、春朗を名乗った時代の役者絵の発展形態である、という結論に至らざるをえない。それは形象の類似性と同時に、線の質が共通するからである。写楽の『大谷鬼次』の顔と手と、北斎の『神奈川沖浪裏』の波は、その迫りくる激しい造形感覚では同じなのだ。そのことを読者に説得しようとするのが、この書の目的である。
内容(「MARC」データベースより)
フランス美術、イタリア美術の分野で、本場の学界でも注目を浴びる専門家が、日本美術史最大の謎・写楽に挑む。文献に頼りすぎたこれまでの写楽研究を根本から見直し、日本美術の真価を世界に問う。



