出版社/著者からの内容紹介
本書は室町時代の絵画作品とその言説を、それらを生み出した社会的コンテクストから分析した書である。
まず、絵の表現を、絵を作らせ享受した者の願望の表象として読み解いた。取り上げた作品は、「桑実寺縁起絵巻」と「日吉山王・祇園祭礼図屏風」である。ともに土佐光茂筆と考えられる。2作品は画面の形態も主題も異なり、従来の美術史の分類では、前者は「社寺縁起絵巻」、後者は「祭礼図屏風」というように、まったく別のジャンルに入っていた。しかし、画面を詳細に分析しその意味を考えていくと、双方の絵がともに、敵対勢力により京都を追われ近江に滞在していた第12代室町将軍足利義晴にとって意味のあるものと解釈される。つまり双方の絵では、近江の桑実寺や坂本が、絵の注文主である将軍がいるにふさわしい都のごとき場とみなせるように表されていると考えられるのである。絵巻の「詞書」(文字によって語られる話)や、屏風の絵が見せる表面の物語ではなく、絵がイメージならではの引用、含意、表現によって訴えようとしているものを探り、それを社会的政治的状況と絡めて分析することで、2つの絵の意味や機能を明らかにしえた。
具体的には、例えば「桑実寺縁起絵巻」については、全7段分の絵のすべてについて、表現を詳細に見ながらそのイメージソースを探り、また類似する表現をもつ他の作品との表現のズレを探るなどした後、全段の絵を総合的に見通すことで、この絵巻の制作意図を浮かびあがらせた。この作業の過程で、下巻第1段の景観表現が桑実寺一帯の実際の景色の観察に基くことも明らかになり、絵巻では桑実寺一帯を、注文主である将軍が滞在するにふさわしい場として、称揚して描いていると考えることができた。この絵巻も一方の屏風も、描かれた内容や表現が、力の回復を望む将軍の願望の表象となっていると考えられるのである。
また言説研究としては、室町時代の画派土佐派の絵の評価が明治以降概して低く語られるのは、誰のどのような語りから始まるのか、それはなぜか
、またなぜその語りが継承されるのかを探った。具体的には、江戸時代の『本朝画史』において土佐派を「古風」で「女性」的なものと見る見方が狩野派によって創出され、時代を経てもそれが踏襲されたと考えた。
本書においては、室町絵画を題材に、視覚表象や言説の産出が、自分が持ちたいと望む権力を可視化し言語化しそれを規範としていこうとする男性達の営みであることを明らかにした。さらに本書においては、それらの産出に際しジェンダーメタファーはどのように使われているのか、また、それらの絵画を女性は享受しえたのかという問題をも掘り下げ、ジェンダーの視点からの新しい美術史研究の可能性をも探った。
まず、絵の表現を、絵を作らせ享受した者の願望の表象として読み解いた。取り上げた作品は、「桑実寺縁起絵巻」と「日吉山王・祇園祭礼図屏風」である。ともに土佐光茂筆と考えられる。2作品は画面の形態も主題も異なり、従来の美術史の分類では、前者は「社寺縁起絵巻」、後者は「祭礼図屏風」というように、まったく別のジャンルに入っていた。しかし、画面を詳細に分析しその意味を考えていくと、双方の絵がともに、敵対勢力により京都を追われ近江に滞在していた第12代室町将軍足利義晴にとって意味のあるものと解釈される。つまり双方の絵では、近江の桑実寺や坂本が、絵の注文主である将軍がいるにふさわしい都のごとき場とみなせるように表されていると考えられるのである。絵巻の「詞書」(文字によって語られる話)や、屏風の絵が見せる表面の物語ではなく、絵がイメージならではの引用、含意、表現によって訴えようとしているものを探り、それを社会的政治的状況と絡めて分析することで、2つの絵の意味や機能を明らかにしえた。
具体的には、例えば「桑実寺縁起絵巻」については、全7段分の絵のすべてについて、表現を詳細に見ながらそのイメージソースを探り、また類似する表現をもつ他の作品との表現のズレを探るなどした後、全段の絵を総合的に見通すことで、この絵巻の制作意図を浮かびあがらせた。この作業の過程で、下巻第1段の景観表現が桑実寺一帯の実際の景色の観察に基くことも明らかになり、絵巻では桑実寺一帯を、注文主である将軍が滞在するにふさわしい場として、称揚して描いていると考えることができた。この絵巻も一方の屏風も、描かれた内容や表現が、力の回復を望む将軍の願望の表象となっていると考えられるのである。
また言説研究としては、室町時代の画派土佐派の絵の評価が明治以降概して低く語られるのは、誰のどのような語りから始まるのか、それはなぜか
本書においては、室町絵画を題材に、視覚表象や言説の産出が、自分が持ちたいと望む権力を可視化し言語化しそれを規範としていこうとする男性達の営みであることを明らかにした。さらに本書においては、それらの産出に際しジェンダーメタファーはどのように使われているのか、また、それらの絵画を女性は享受しえたのかという問題をも掘り下げ、ジェンダーの視点からの新しい美術史研究の可能性をも探った。
内容(「BOOK」データベースより)
室町後期に描かれた「桑実寺縁起絵巻」と「日吉山王・祇園祭礼図屏風」。主題も画面形式も異なる二つの絵画に描き込まれた足利将軍の想いとは。
内容(「MARC」データベースより)
応仁の乱前後に完成した2つの絵画「桑実寺縁起絵巻」「日吉山王・祇園祭礼図屏風」。形式も主題も異なる2つの絵画に込められた注文主・足利将軍の胸中はいかなるものであったか? 推理小説のような日本絵画の世界。
著者からのコメント
本書においては、「桑実寺縁起絵巻」と「日吉山王・祇園祭礼図屏風」という室町絵画を題材に、視覚表象や言説の産出が、自分が持ちたいと望む権力を可視化し言語化しそれを規範としていこうとする男性達の営みであることを論じている。さらに本書では、それらの産出に際しジェンダーメタファーはどのように使われているのか、また、それらの絵画を女性は享受しえたのかという問題をも掘り下げ、ジェンダーの視点からの新しい美術史研究の可能性をも探っている。



