出版社/著者からの内容紹介
芸術は、政治や社会に対してどのような力を発揮するのか。
政治的、社会的動物である人間として、芸術家はどのような方法で世に関わり
あってきたのか。
戦争、社会諷刺、愛を描く銅版画家浜田知明。代表作品図版と、作品と同様鋭い
光りを放つ作家自身の文を構成。本書は世界情勢がますます深刻化する
今日、若い世代から戦争経験のある世代まで、幅広く浜田作品に向き合い、人間
とは何か、社会とは何かを、芸術を通じて見つめ直すきっかけをつくる。
●書き下ろし文「よみがえる風景」掲載●完全日英併記
政治的、社会的動物である人間として、芸術家はどのような方法で世に関わり
あってきたのか。
戦争、社会諷刺、愛を描く銅版画家浜田知明。代表作品図版と、作品と同様鋭い
光りを放つ作家自身の文を構成。本書は世界情勢がますます深刻化する
今日、若い世代から戦争経験のある世代まで、幅広く浜田作品に向き合い、人間
とは何か、社会とは何かを、芸術を通じて見つめ直すきっかけをつくる。
●書き下ろし文「よみがえる風景」掲載●完全日英併記
出版社からのコメント
もう戦争はいけない。殺したり、殺されたりしてはいけない。自
ら命を絶ってはいけない。そう思える本です。
ら命を絶ってはいけない。そう思える本です。
著者からのコメント
戦死したとしても、魂が靖国に行くなどとは考えたことがなかっ
た。死者の魂が棲むのは、彼らが愛した肉親や親しい人たちの心の中であり、そ
の人たちが死者を想うときその時だけ彼らはよみがえる。戦争を知らない世代の
一部の人たちから最近勇ましい言葉が聞かれるようになった。私の瞼にはまだ白
木の箱に収まり、戦友の腕に抱えられて還って来た英霊たちの姿が残っていると
いうのに。
た。死者の魂が棲むのは、彼らが愛した肉親や親しい人たちの心の中であり、そ
の人たちが死者を想うときその時だけ彼らはよみがえる。戦争を知らない世代の
一部の人たちから最近勇ましい言葉が聞かれるようになった。私の瞼にはまだ白
木の箱に収まり、戦友の腕に抱えられて還って来た英霊たちの姿が残っていると
いうのに。
著者について
1917年(大正6年)、熊本県の御船町に生まれる。
版画家。浜口陽三、駒井哲郎らと並び、第二次大戦後の日本を代表する版画家の
ひとり。戦争体験をもとに制作した『初年兵哀歌
』シリーズは高い評価を得、
1956年
のルガノ国際版画展で受賞。日本国内のみならず、1979年
にはウィーン
(アルベルティーナ国立素描美術館)、1993年にはロンドン(大英博物館日本
館)で回顧展を開催するなど、国際的にも活躍している。技法
的にはエッチング
を主体に作成し、アクアチント
を併用することもある。核戦争のような人間社会
の不条理や人間心理の暗部といった深刻なテーマを、ブラックユーモアにくるん
で表現している。発表する作品を厳しく選別しており、発表する作品は平均し
て年間数点に過ぎない。また、初期の作品は大部分が本人によって破棄された。
1983年(昭和58年)からはブロンズ彫刻にも取り組んでいる。
版画家。浜口陽三、駒井哲郎らと並び、第二次大戦後の日本を代表する版画家の
ひとり。戦争体験をもとに制作した『初年兵哀歌
1956年
(アルベルティーナ国立素描美術館)、1993年にはロンドン(大英博物館日本
館)で回顧展を開催するなど、国際的にも活躍している。技法
を主体に作成し、アクアチント
の不条理や人間心理の暗部といった深刻なテーマを、ブラックユーモアにくるん
で表現している。発表する作品を厳しく選別しており、発表する作品は平均し
て年間数点に過ぎない。また、初期の作品は大部分が本人によって破棄された。
1983年(昭和58年)からはブロンズ彫刻にも取り組んでいる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
浜田 知明
1917年12月23日、熊本県生まれ。1934年、御船中学校を第四学年で修了し、東京美術学校(現・東京藝術大学)油画科入学。1939年、東京美術学校油画科卒業。1956年
、毎日新聞社主催、第二回現代日本美術展において『よみがえる亡霊』、『副校長D氏像』で佳作賞受賞。「第4回「白と黒」国際版画展(ルガノ)」において『初年兵哀歌
(歩哨)』で次賞受賞。1960年
、毎日新聞社主催、「第四回現代日本美術展」において『群盲』で優秀賞受賞。以後、数々の賞を受賞。2007年、『浜田知明よみがえる風景』を求龍堂より刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1917年12月23日、熊本県生まれ。1934年、御船中学校を第四学年で修了し、東京美術学校(現・東京藝術大学)油画科入学。1939年、東京美術学校油画科卒業。1956年
抜粋
戦友に抱かれて還ってきた白木の箱には、
石ころが入っていたという。
拾う人もなく、打ち捨てられた遺骨は風雨に晒され、
風に吹かれてカラカラと乾いた音を立てる。
破れた靴だけがまだ兵士の意志を留めるかのように、
故国に向かって歩きつづけようとする。
やがて全ては大自然の土に還り、頭蓋骨の眼窩からは
新しい生命が芽吹き始める。
石ころが入っていたという。
拾う人もなく、打ち捨てられた遺骨は風雨に晒され、
風に吹かれてカラカラと乾いた音を立てる。
破れた靴だけがまだ兵士の意志を留めるかのように、
故国に向かって歩きつづけようとする。
やがて全ては大自然の土に還り、頭蓋骨の眼窩からは
新しい生命が芽吹き始める。
「共同通信」、2007/03/27
巻末近くにある文章の一節。「戦争を知らない世代の一部の人達の中
から、最近勇ましい言葉が聞かれるようになった」。戦争体験者の危機感がにじ
む。浜田さんは問う。「なぜ少年兵までが死ななくてはならなかったか。誰が
人々を死に追いやたのか」。不条理な軍律と暴力の下で自殺を考え、聖戦
の美名
と裏腹な戦の実態を見た人は、浅薄な歴史観で死者をたたえる為政者に憤る。
から、最近勇ましい言葉が聞かれるようになった」。戦争体験者の危機感がにじ
む。浜田さんは問う。「なぜ少年兵までが死ななくてはならなかったか。誰が
人々を死に追いやたのか」。不条理な軍律と暴力の下で自殺を考え、聖戦
と裏腹な戦の実態を見た人は、浅薄な歴史観で死者をたたえる為政者に憤る。
「読売新聞」、2007/04/02
その作品は時に、漫画のように見える。銃をのどにあてがい、引き金
に足指をかけた兵士の姿に対して、不謹慎だと怒られるかもしれない。けれど状
況のシュールさ、それが強いた死の小ささをそのままに、誰にでも分かるよう切
り詰めて伝えようとした時、決して壮麗、優美
な絵画になり得なかったのではな
いか。
に足指をかけた兵士の姿に対して、不謹慎だと怒られるかもしれない。けれど状
況のシュールさ、それが強いた死の小ささをそのままに、誰にでも分かるよう切
り詰めて伝えようとした時、決して壮麗、優美
いか。
「日経新聞」、2007/04/08
銃をのどにつきつける「歩哨」をはじめとする連作、近年の風刺精神
に富んだ彫刻。時々の文章を添え、主な作品を紹介する。惨禍をもたらす権力と
人間を一貫して批評する。独創的な造型感覚に圧倒される。
に富んだ彫刻。時々の文章を添え、主な作品を紹介する。惨禍をもたらす権力と
人間を一貫して批評する。独創的な造型感覚に圧倒される。
『熊本日日新聞』射程、2007/04/22
「浜田芸術の今日性」
在熊の世界的な版画家・彫刻家の浜田知明氏は第二次大戦中、丸五年を軍隊で過
ごした。戦争の無惨を告発する「初年兵哀歌
」シリーズで世に出た浜田氏は八十
九歳の今も、政治や教育、文化などいろいろな面での「人間の変わらない愚か
さ」を描き続けている。
そんな作家の新著「浜田知明 よみがえる風景」(求龍堂)が出版された。
収録されているのは代表作など約七十点。随所に浜田氏自身の言葉が添えられて
おり、タイトルの「よみがえる--」は復古調が強まってきたように見える日本の
現状への警鐘とも言える。
折しも、戦争中の日本軍をめぐる論議が内外でかまびすしい。
従軍慰安婦問題について安倍晋三首相は、動員の「強制性」を否定し、下村博
文官房副長官も「日本軍の関与はなかったと認識している」と発言した。これに
対して米下院では、安倍首相の公式謝罪を求める動きが出ている。
このため安倍首相は先ごろブッシュ大統領と電話会談し、日本軍の関与を認め
て謝罪した一九九三年の「河野洋平官房長官談話」を踏襲する考えを強調。米誌
のインタビューで謝罪の意を表明した。
一方、来年度から使われる高校教科書検定では、沖縄戦で日本軍が住民の集団
自決を強いたとの記述に修正を求める意見が付いた。従来の「現代史の通説」
に、初めて「待った」がかかったわけだ。
「戦争を知らない世代の一部の人達の中から、最近勇ましい言葉が聞かれるよ
うになった」。憲法九条を大切に思う浜田知明氏は、著書で危ぶんでいる。(龍
神)
在熊の世界的な版画家・彫刻家の浜田知明氏は第二次大戦中、丸五年を軍隊で過
ごした。戦争の無惨を告発する「初年兵哀歌
九歳の今も、政治や教育、文化などいろいろな面での「人間の変わらない愚か
さ」を描き続けている。
そんな作家の新著「浜田知明 よみがえる風景」(求龍堂)が出版された。
収録されているのは代表作など約七十点。随所に浜田氏自身の言葉が添えられて
おり、タイトルの「よみがえる--」は復古調が強まってきたように見える日本の
現状への警鐘とも言える。
折しも、戦争中の日本軍をめぐる論議が内外でかまびすしい。
従軍慰安婦問題について安倍晋三首相は、動員の「強制性」を否定し、下村博
文官房副長官も「日本軍の関与はなかったと認識している」と発言した。これに
対して米下院では、安倍首相の公式謝罪を求める動きが出ている。
このため安倍首相は先ごろブッシュ大統領と電話会談し、日本軍の関与を認め
て謝罪した一九九三年の「河野洋平官房長官談話」を踏襲する考えを強調。米誌
のインタビューで謝罪の意を表明した。
一方、来年度から使われる高校教科書検定では、沖縄戦で日本軍が住民の集団
自決を強いたとの記述に修正を求める意見が付いた。従来の「現代史の通説」
に、初めて「待った」がかかったわけだ。
「戦争を知らない世代の一部の人達の中から、最近勇ましい言葉が聞かれるよ
うになった」。憲法九条を大切に思う浜田知明氏は、著書で危ぶんでいる。(龍
神)



